
記憶の箱舟 神話と神々のおはなし!
対象年齢:小学校高学年生
はるか昔、まだこの世界ができる前のことです。
天と地は分かれておらず、すべてが入り混じった「混沌(こんとん)」とした状態でした。上も下もなく、光も形も定まらない世界です。
やがて時が流れ、天と地が分かれるときが訪れました。
こうして天は「高天原(たかまのはら)」と呼ばれる、神々が住む天上の世界となり、地は「葦原中国(あしはらのなかつくに)」と呼ばれる、のちに人間が住む地上の世界となったのです。ここから、日本の神話は始まります。
高天原に最初に現れたのは、「造化三神(ぞうかさんしん)」と呼ばれる三柱の神です。天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、高御産巣日神(たかみむすびのかみ)、神産巣日神(かみむすびのかみ)です。
これらの神々は、姿や性格がはっきり語られない特別な神で、世界を生み出す力そのものを表しています。
続いて、「神世七代(かみよななよ)」と呼ばれる神々が次々に現れます。そして、その最後に登場するのが、男神の伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と、女神の伊邪那美命(いざなみのみこと)です。この二柱の神が、日本の国づくりを進めていくことになります。

二神は、高天原から地上を見下ろし、「この国を整え、形あるものにしよう」と話し合います。そして、天の浮橋(あめのうきはし)から、天沼矛(あめのぬぼこ)という矛を海に差し入れ、かき混ぜました。矛を引き上げると、したたり落ちたしずくが固まり、最初の島が生まれます。これが淡路島です。
その後、二神は次々に島を生み出していきます。
淡路島にはじまり、四国、隠岐島、九州、壱岐、対馬、佐渡島、そして本州が生まれ、日本列島が形づくられていきました。これを「国生み(くにうみ)」といいます。
国生みを終えた伊邪那岐と伊邪那美は、今度は自然や社会に関わる神々を生んでいきます。山の神、川の神、風の神、木や草の神など、私たちの暮らしに欠かせない存在ばかりです。
しかし、最後に伊邪那美が火の神・火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)を生んだとき、大やけどを負ってしまい、亡くなってしまいます。
愛する妻を失った伊邪那岐は、深い悲しみに包まれながらも、黄泉国(よみのくに)へと伊邪那美を迎えに行きます。しかし、そこではもう、以前の姿の伊邪那美はいませんでした。恐ろしくなった伊邪那岐は、黄泉国から逃げ帰り、現世との境を大岩でふさいだのです。
これにより、生と死の世界は分かたれました。

黄泉国から戻った伊邪那岐は、身についた穢れ(けがれ)を落とすため、川で禊(みそぎ)を行います。このとき生まれたのが、太陽の神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)、月の神・月読命(つくよみのみこと)、嵐の神・須佐之男命(すさのおのみこと)です。
この三柱は「三貴子(さんきし)」と呼ばれ、日本神話の中心となる神々です。
天照大御神は高天原を治め、世界に光と秩序をもたらしました。一方、須佐之男命は乱暴なふるまいをくり返し、高天原を追われて地上へと降ります。地上では八岐大蛇(やまたのおろち)を退治し、人々を救う英雄となりました。
その後、地上では大国主神(おおくにぬしのかみ)が国づくりを進め、人々の暮らしを整えていきます。しかし、やがて天の神々は、「地上を天照大御神の子孫に治めさせよう」と考え、国譲りが行われます。
こうして、天照大御神の孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が地上に降り立ちます。これを「天孫降臨(てんそんこうりん)」といいます。その子孫が、のちに神武天皇となり、大和国を建て、日本の国が形づくられていきました。
大和国の成立とともに、神々の信仰も整理され、神話は物語として語り継がれるようになります。こうして生まれたのが、日本独自の信仰である「神道(しんとう)」です。
神道のもとには、文字が生まれるよりも前から、人々が自然の中に神を感じてきた心があります。山や川、風や木、岩や海――すべてのものに神が宿ると考えられてきました。 神話は、そうした自然への敬意と感謝の気持ちを、物語として伝えてくれる大切な文化なのです。


