八百万の神々をめぐるⅠ

記憶の箱舟 八百万の神々をめぐるⅠ

日本の主な神社とその信仰

神社には、それぞれどんな神が祀られているかご存じでしょうか?
文化庁の『宗教年鑑』によると、日本には約8万社の神社が登録されています。これは大きな神社のみで、地域の小祠(ほこら)まで含めれば20万を超えるといわれます。まさに「八百万(やおよろず)の神々」が息づく国です。

そんな数多くの神社の名前を眺めると、「○○八幡神社」「○○稲荷神社」といった似た名を多く目にします。実は、同じ神名を持つ神社には“共通の信仰の源”があるのです。つまり、神社には“系統”があり、それぞれの神が守る領域やご利益に特色があります。

ここでは、日本各地に広がる主な神社を信仰の系統ごとにまとめてみました。それぞれの神々の性格やご利益、歴史を知ることで、参拝のたびに“祈りの意味”がより深く感じられるはずです。

1、全国最多の八幡神社⇒武神にして皇祖神。日本一多い神社系統

八幡神社は全国に約7817社を数え、最も多い神社系統です。総本社は大分県の宇佐神宮。主祭神は応神天皇を神格化した「誉田別命(ほんだわけのみこと)」で、皇室の祖神として祀られます。

八幡信仰は、「武家の守護神」「国家鎮護の神」として中世以降に広がりました。東大寺の大仏建立に八幡神が加護を授けた伝承は有名です。
ご利益は「厄除け」「交通安全」「勝運祈願」など。今でも“八幡さま”は、地域を守る万能の神として広く信仰されています。

2、伊勢神宮から始まる伊勢信仰⇒天照大御神を祀る、“日本の心”の神社

伊勢神宮は内宮(ないくう)と外宮(げくう)からなり、内宮には太陽神・天照大御神、外宮には豊受大御神を祀ります。皇室の祖神であり、国家の守護神。全国に分社がほとんどないのは、“伊勢に心を向けて遥拝する”という信仰が根づいているためです。

「お伊勢まいり」は江戸時代の庶民の夢でした。伊勢信仰の根底には「感謝」と「和の心」が流れており、個人的願いや利益よりも“日々の無事と感謝”を祈る姿勢が大切とされます。

3、学業成就でおなじみの天神神社⇒人間の知と努力を象徴する菅原道真の神

全国に約1万2000社ある天神神社(天満宮)は、学問の神・菅原道真(すがわらのみちざね)を祀っています。その総本社が福岡県の太宰府天満宮と京都の北野天満宮です。

無実の罪により都を追われた道真が亡くなった後、都では落雷や疫病が続発。「怨霊」と恐れられた道真を鎮めるために建てられた北野天満宮が信仰の始まりです。
道真はやがて“雷の神”から“学問の神”へと転じ、努力と真心の象徴として尊ばれました。境内の“撫で牛”を撫でれば知恵が授かるとされます。

4、キツネが特徴の稲荷神社⇒商売繁盛と豊作の神、“お稲荷さん”

全国に約3万社を数える稲荷神社。総本社は京都・伏見稲荷大社です。主祭神は宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)で、米や穀物の神です。

朱の鳥居とキツネ像が象徴的ですが、キツネは神そのものではなく“神の使い”。稲を食い荒らす鼠を追う存在として神聖視されました。
江戸時代には「お稲荷さま=商売繁盛の神」として広まり、多くの商家が屋敷神として祀りました。願いの通り道を表す“千本鳥居”は今も信仰の象徴です。

5、神仏習合の熊野神社⇒山と海をむすぶ、再生の聖地

和歌山県の熊野三山(本宮大社速玉大社那智大社)を総本社とする熊野神社。主祭神は素戔嗚尊(すさのおのみこと)を中心とした熊野三所権現。

神仏習合が顕著で、阿弥陀如来や薬師如来と結びつき、“神も仏も一体”の信仰を生みました。
「蟻の熊野詣」と呼ばれ、身分を問わず巡礼する人々が見られたのは再生を願う信仰の表れです。ご利益は「無病息災」「蘇り」「厄除け」「縁結び」など。

6、日本の軍神を祀る諏訪神社⇒風と武の神、建御名方命の信仰

長野県の諏訪大社を総本社とする諏訪神社は、全国に約5000社。主祭神は建御名方神(たけみなかたのかみ)で、風・水・狩猟・戦の神です。

国譲り神話で建御雷神と戦い、敗れて諏訪へ隠れたという逸話から“不屈の神”として崇められました。
七年ごとの御柱祭は、山と人が一体になる壮大な神事。ご利益は「勝負運」「五穀豊穣」「風害除け」。

7、スサノオファミリーを祀る八坂神社⇒“祇園さん”として厄除けと縁結びの神

京都・八坂神社を総本社とし、主祭神は素戔嗚尊(すさのおのみこと)と妻・櫛稲田姫命、その子神たち。

平安時代、疫病鎮めを祈る祇園御霊会が起源となり、現在の祇園祭に続く。「牛頭天王=スサノオ」の習合信仰が全国へ広がりました。
八坂神社は“災いを祓い良縁を結ぶ神”。荒ぶる力を和の力に変え、人々を守る祈りの象徴です。

8、関東でスサノオを祀る氷川神社⇒武蔵の国を守る、東のスサノオ信仰

埼玉県の「武蔵一宮 氷川神社」を総本社とし、関東に約280社ある氷川神社。主祭神は素戔嗚尊・奇稲田姫命・大己貴命の三柱。

“出雲信仰の東伝”を象徴する神社で、源頼朝・徳川家康など武将の信仰も深い。
ご利益は「厄除け」「家内安全」「縁結び」。大宮の広大な杜は、静かに心を整える“東国の聖地”です。