
登山探検 羅臼岳を登ってみたい!
羅臼岳◆(岩尾別コース)

登山愛好家なら誰もが一度は抱くその願いを叶えるべく、8月下旬、私たちは最果ての地へと車を走らせました。北海道の中でも、やはり知床連山の主峰・羅臼岳は別格の存在感です。今回は、前日の知床観光から登頂までの、笑いと感動に包まれた備忘録をお届けします。

朝9時、仲間と集合して出発。北海道の広さは分かっているつもりでしたが、高速道路を飛ばしても知床はやはり遠い。しかし、その距離さえも旅のスパイスです。道中、道の駅に立ち寄っては地元の味覚に目を奪われ、神秘的な「神の子池」のコバルトブルーに息を呑み、「桜の滝」では懸命に跳ねるサクラマスの姿に勇気をもらいました。
ウトロに到着した頃には、まだ太陽が高い位置にありました。そこで、まずは足慣らしに「知床五湖」を散策することに。高架木道を歩きながら、明日私たちが挑む知床の山々を指差して確認します。
「あの一番高いのが明日登る羅臼岳か……」と、地上から見上げる山容はどこまでも高く、威風堂々としています。コンビニで翌日の行動食や水分をたっぷり買い込み、今夜の宿である「酋長の家」へチェックイン。ここからが、ある種メインイベントとも言える前夜祭の始まりです。

電話で人気店「波飛沫(なみしぶき)」の予約を確認し、宿を出ます。ウトロ漁港に沈む真っ赤な夕日に見惚れながら、海沿いを歩いて店へと向かいました。
美味しいラーメンや一品料理を囲み、気がつけば日本酒のグラスが次々と空いていきます。明日の登山への期待か、あるいは知床の空気のせいか、ついつい「少々の飲み過ぎ」になってしまうのは、いつものメンバーゆえの楽しみ。とはいえ、明日は早出です。深追いせずに切り上げ、心地よい酔いとともに酋長の家で眠りにつきました。


翌朝、まだ周囲が深い闇に包まれている頃に宿を出発。登山口である「木下小屋」に到着したのは5:15でしたが、驚いたことに駐車場はすでに満車。道路脇まで車がびっしりと並んでいました。さすがは百名山、そして8月の知床。日本中から登山者が集まっているようです。
準備を整え、登山口で恒例の儀式。4人の足を十字に寄せ、「無事に帰ってこよう!」と誓い合って一歩を踏み出しました。
原生林の中を進むコースは、最初こそ緩やかですが、徐々に傾斜を増していきます。このコースの嬉しいところは、冷たくて美味しい天然の水場があること。まずは「弥三吉水(やさきちみず)」、そして「銀嶺水(ぎんれいすい)」。火照った体に染み渡る知床の恵みに、自然と元気が湧いてきます。

樹林帯を抜け、視界が開けるとそこは「羅臼平」。ここからの羅臼岳の眺めは、まさに圧巻です。天を突くような岩の要塞が、目の前にどっしりと鎮座しています。
ここにはフードロッカーが設置されており、知床の厳しい「ヒグマ対策」が徹底されています。実はこの登山から1年後、この岩尾別コースで全国的なニュースになるほどの熊の事件が発生しました。その頃には登山ショップから熊スプレーが消えるほどの物議を醸したのですが、この時はまだ、知床の静寂の中に熊の気配をかすかに感じる程度でした。


羅臼平から山頂までは、いよいよ本格的な岩登り。大きな岩が積み重なった急斜面を、手も使いながら慎重に登っていきます。落石に注意しながら、一歩一歩高度を稼ぐたびに、背後に広がる知床連山のパノラマがさらに壮大になっていきます。

そして11:00、ついに標高1,660m、羅臼岳の山頂に到達しました!
空は見事なまでの快晴。360度の大パノラマが私たちを待っていました。山頂で食べる昼食は、どんな高級料理よりも贅沢です。約1時間、至福の時を過ごしました。
頂上からは、知床半島の険しい稜線が海へと向かって伸びていく様子がはっきりと見えます。

さらに視線を転じれば、左手には深い緑に抱かれた「羅臼湖」、右手にはどこまでも続く青い「オホーツク海」。北海道の端っこに立っている実感が、体の底から込み上げてきます。

山頂には私たちの他にも多くの登山者がおり、皆一様に、この奇跡的な晴天と絶景に笑顔を浮かべていました。
12:00、名残惜しいですが下山開始です。下りは岩場での転倒や、長い樹林帯での疲れによるスリップに細心の注意を払います。登りであれほど楽しんだ道も、帰りは長く感じるもの。16:00、ようやく木下小屋まで戻り、無事に下山を完了しました。
下山後も、旅は終わりません。再び道の駅に寄りながら、北海道の広大な大地をひた走ります。お土産を買い、登山の余韻に浸りながらハンドルを握りましたが、自宅のドアを開けたのは、なんと日付が変わるわずか5分前。移動距離も含め、まさに「探検」と呼ぶにふさわしい丸二日間でした。
あの時見た、知床の青い海と鋭い岩肌。今でも目を閉じれば、昨日のことのように思い出されます。
05:15 木下小屋(登山口)出発~09:30 羅臼平(休憩)~11:00 羅臼岳山頂着(1時間休憩・昼食)12:00 山頂出発~16:00 木下小屋 下山完了


