荒川岳・赤石岳を登ってみたいⅡ!

登山探検 荒川岳・赤石岳を登ってみたいⅡ!

荒川岳◆(蕨段コース)千枚岳丸山悪沢岳中岳前岳小赤石岳赤石岳

北海道の山々を歩き尽くしてきた私にとっても、南アルプスの深部は別格の憧れでした。2泊3日の壮大な縦走、そのハイライトとなる2日目です。昨夜お世話になった千枚小屋の温もりを背に、まだ星が瞬く午前3時50分、ヘッドランプの明かりを頼りに出発です。

暗闇の中、ゴアのカッパを着て一歩一歩踏み締めるたびに、ひんやりとした高山の空気が肺を満たしていきます。4時30分、千枚岳の山頂に辿り着くと、東の空がわずかに白み始めていました。ふと振り返れば、そこには言葉を失うような光景が。

丸山からの日の出と富士山

足早に丸山へと向かうと、5時20分、ついにその時が訪れます。
紺碧の空がオレンジ色に染まり、その完璧なシルエットを浮かび上がらせたのは、日本の象徴・富士山。これまで北海道の大地から大雪山や十勝岳を眺めてきましたが、この距離で見る富士山は、やはり圧倒的な存在感があります。ご来光の光が丸山の山頂を黄金色に染め上げる瞬間、寒さも疲れも吹き飛び、ただただ自然の美しさに感謝するしかありません。

千枚岳に掛る滝雲

山肌を真っ白な霧が静かに、しかし力強く乗り越えていく「滝雲」です。まるで生き物のように千枚岳の稜線を這い降りる姿は、北海道の山ではなかなかお目にかかれない、南アルプスならではの重厚なスペクタクルでした。

中岳から雲の流れる赤石岳

5時55分、標高3,141mの悪沢岳(荒川東岳)に登頂。3,000mを超えた世界は、空の色が一段と濃く感じられます。ここからは岩稜帯の本格的な縦走路。6時35分に荒川岳を通過し、中岳、前岳へと駒を進めます。
中岳から望む赤石岳は、まさに「南部の王」。巨大なピラミッドのような山容に、時折ガスが激しく吹き付け、雲が躍るように流れていきます。そのダイナミックな動きは、まるで山が呼吸しているかのようです。

前岳から赤石岳

6時55分に中岳、7時25分には前岳へと到着。前岳の山頂付近は、お花畑が広がる癒しの空間でした。8月下旬、盛夏は過ぎたとはいえ、シナノキンバイやハクサンチドリの残党たちが、岩陰で慎ましく、しかし力強く咲いています。

縦走路から赤石小屋と赤石岳

ここからは一気に荒川小屋へと下ります。8時30分、荒川小屋に到着。

赤川小屋

ここは南アルプスの中でも屈指のお花畑が広がる場所として有名です。少し長めの休憩を取り、名物のカレーを想像しながら、売店をチェックするのも登山の楽しみの一つ。

赤川小屋

赤川小屋売店

9時20分、英気を養って再び出発。ここからは本日のメインイベント、赤石岳への登り返しです。10時50分に小赤石岳へ着く頃には、あんなに晴れていた空にガスが湧き始めました。小赤石岳から赤石岳にかけては、残念ながらガスの中の散歩。しかし、それもまた山の表情です。霧の中から突如として現れる巨大な岩塊に、畏怖の念を抱きながら歩を進めます。
11時25分、ついに標高3,121m、赤石岳の頂に立ちました。

赤石小屋前庭

14時10分、ついに赤石小屋に到着しました。小屋に荷物を置いたら、一番の楽しみが待っています。
それは、小屋の前庭で赤石岳を眺めながらいただく、至福のビール!空は再び快晴へと戻り、西日に照らされた赤石岳が、まるで今日一日の頑張りを労ってくれているようです。この瞬間のために、私たちは重いザックを背負い、汗を流して登るのでしょう。
静かな時間が流れる中、北海道の山々の話を思い出しつつ、南アルプスの懐の深さに酔いしれる、最高の2日目が終わりました。

山頂のプレート群

多くの登山家が目指したであろう、歴史を感じさせる山頂プレートが並びます。一瞬、ガスの切れ間から下界が見えた時の高揚感。北海道の山とは違う、深く、どこまでも続く山脈の連なりに、「今、自分は南アルプスの心臓部にいるのだ」と実感しました。
山頂を後にし、今夜の宿である赤石小屋を目指して下山を開始。縦走路を振り返れば、ガスが晴れ、再びその雄姿を見せてくれた赤石岳。

南アルプスからの富士山

【登山データ:2日目】
コース行程: 千枚小屋(3:50)→ 千枚岳(4:30)→ 丸山(5:20)→ 悪沢岳(5:55)→ 荒川岳(6:35)→ 中岳(6:55)→ 前岳(7:25)→ 荒川小屋(8:30-9:20)→ 小赤石岳(10:50)→ 赤石岳(11:25)→ 赤石小屋(14:10着)
山の特徴: 日本第6位の標高を誇る悪沢岳と、風格ある赤石岳を結ぶ3,000m級の稜線。
コースの特徴: 岩稜帯、ザレ場、急登、お花畑と、登山の魅力が凝縮されたルート。
危険箇所: 悪沢岳〜中岳間の岩場での足踏み外し。小赤石岳付近のガレ場での滑落注意。
見どころ: 丸山からのご来光と富士山、千枚岳の滝雲、中岳から望む赤石岳の雄姿。
楽しみ: 荒川小屋や赤石小屋の売店、赤石小屋前庭での展望とビール。
花: 8月下旬でも見られるシナノキンバイ、マツムシソウ、タカネビランジなどの高山植物。
宿泊地: 赤石小屋(赤石岳の絶好の展望台。水は天水がメインのため節水を。スタッフがとても親切です)