
登山探検 海別岳を登ってみたい!
海別岳■(朱円の尾根コース)

知床半島の付け根にそびえる「海別岳(うなべつだけ)」。夏道がないため、積雪期や残雪期限定の知る人ぞ知る名峰です。今回は5月初旬、残雪を狙って挑んだ山行記録を綴ります。


ずっと気になっていた山でした。しかし、夏道がないというハードルの高さに、これまでは二の足を踏んでいたのです。「今年こそは」と入念に下調べを行い、最高の天候を待ってついに決行の日を迎えました。
前夜はJR斜里駅で車中泊。静まり返った駅のホームには、ポツンと一台のディーゼル車両が車内灯を点けて停まっていました。明日への高揚感を抑えながら、早々にシュラフに潜り込みました。


翌朝、まだ周囲が暗いうちに行動を開始します。車を走らせ、まずはシカゲートを通過。ゲートには「必ず閉めましょう!」の切実な文字。ここからは野生の王国へお邪魔する気分です。
林道をさらに進みますが、予想よりも早く残雪が立ちはだかりました。車の進軍はここまで。当初の予定より手前ですが、ここを「林道最終地点」として、いよいよ歩き出しです。

しばらくは雪の積もった林道を歩き、シマトツカリ川と十二線川に挟まれた尾根の中心部を目指します。ここからが本番。林道を離れ、山頂へと続く尾根に取り付きました。


標高650m(C650)付近までは尾根の左側を進み、そこからは細くなった尾根の左側をなぞるように登っていきます。しかし、5月上旬ともなると雪解けが進み、あちらこちらからハイマツが「待ってました」と言わんばかりに顔を出しています。



雪が切れている箇所が多く、ハイマツを避けたり跨いだり。ルートファンディングが非常に難しく、足元に神経を使います。

そんな中、標高900m付近でふと振り返ると、真っ白な全景をさらけ出した「斜里岳」が目に飛び込んできました。その神々しさに、疲れも一瞬吹き飛びます。


目の前には山頂らしき高まりが見えますが、これは「偽ピーク」。期待しては裏切られる、登山あるあるの試練です。


偽ピークを越えると、ようやく展望の開けた尾根歩きに変わります。海別岳は独立峰のため、普段は強風が吹き荒れるそうですが、この日は奇跡的な微風。その代わり、照りつける太陽がジリジリと肌を焼き、かなりの暑さです。
登り始めて約4時間15分。ついに海別岳の山頂に到着しました!足元には三角点が静かに鎮座しています。

山頂からの景色は、まさに圧巻の一言でした。 眼下には真っ青なオホーツク海が広がり、視線を北に転じれば、知床半島の主役たちが勢揃いしています。羅臼岳、サシルイ岳、オッカバケ岳、知円別岳、そして硫黄山……。山々のコントラストが驚くほど鮮やかで、時間が止まったかのような錯覚に陥ります。
さらに遠くには武佐岳の姿もくっきりと見ることができました。この素晴らしいパノラマをおかずに、30分ほどの贅沢な休憩を楽しみました。

下山は、自分の付けた足跡を辿りながら急斜面を一気に下ります。全行程、アイゼンを使うことなくツボ足で通すことができました。
予定よりもかなり早い12時に林道まで戻ってこれたので、「よし、もう一座!」と欲が出て、山頂から見えていた今日2座目の武佐岳へと車を走らせることにしました。海別岳の冒険は、最高の達成感とともに幕を閉じました。


