利尻岳を登ってみたい!

登山探検 利尻岳を登ってみたい!

利尻岳◆(沓形コース)~三眺山

フェリーからの夕暮れに利尻富士のシルエット

8月下旬、相棒のバイクにキャンプ道具を積み込み、稚内港からフェリーに乗り込みました。甲板に出ると、潮風が心地よく吹き抜けます。次第に遠ざかる本土を背に、目指すは海上にそびえ立つ孤高の秀峰、利尻富士です。
夕暮れ時、海面に反射するオレンジ色の光の中に、利尻岳の美しいシルエットが浮かび上がりました。その姿はまさに「洋上の貴婦人」。明日あそこへ登るのだと思うと、期待で胸が高鳴ります。

その日は、利尻町にある「沓形岬公園キャンプ場」で前泊。バイクを停め、テントを設営して早めにシュラフに潜り込みました。波の音を子守唄にしながら、明日の快晴を祈ります。

見返台園地から利尻富士
3合目から礼文島

早朝4時。周囲はまだ薄暗く、空にはどんよりとした雲が低く垂れ込めていました。「予報は晴れだったはずだけど……」と少し不安になりつつも、パッキングを済ませて出発。

沓形コースの起点は、沓形市街(利尻町役場前)から約5kmほど山へ向かった「見返台園地(みかえりだいえんち)」です。
ここは駐車場やトイレが完璧に整備されており、展望台もあって観光客にも人気のスポット。ただし、水場がないので注意が必要です。水は必ず麓で用意しておきましょう。
登山口は駐車場の道路沿いにひっそりと佇んでいます。展望台へ続く道からは登山道に繋がっていないので、間違えないように注意して一歩を踏み出しました。

最初は樹林帯の緩やかな登りが続きます。「五葉の坂」と呼ばれるあたり、6合目に差し掛かる頃には、足元に可憐な高山植物たちが顔を出し始めました。8月下旬とはいえ、厳しい環境に耐えて咲く花々は生命力に溢れています。
ふと振り返ると、まだ3合目付近だというのに、雲の切れ間から礼文島が海に浮かんでいるのが見えました。まるで地図を広げたような景色に、思わず足が止まります。

馬の背から
8合目から礼文島

登り始めて約1時間半。7合目の手前には小さな避難小屋があり、そこを過ぎると「礼文岩」に到着します。ここは見晴らしの良い高台になっていて、ひと休みするには最高の場所。ここでようやく、空の雲が急速に取れ始め、待望の青空が広がりました!
7合目から先は、このコースのハイライトの一つ「馬の背」と呼ばれる稜線歩きです。
両側が切れ落ちた開放感抜群のルート。視界を遮るものは何もなく、吹き抜ける風が火照った体に心地よいです。右を見ても左を見ても、真っ青な日本海。自分が島を登っているのだという実感が、全身を突き抜けます。

山頂・ろうそく岩・仙法志稜

馬の背を抜けると、8合目に到着。ここまでの景色も素晴らしかったのですが、ここからが本当の「勝負」の始まりです。傾斜はさらに険しくなり、岩場が目立つようになります。一歩一歩、足場を確認しながら高度を稼いでいきます。
8合目から約50分。息を切らしながら登り詰めると、ついに9合目、そして三眺山に到達しました。

三眺山ピークから利尻本峰を望む
山頂とローソク岩

ここで景色が一変します。それまでの穏やかな山の表情は消え去り、目の前には切り立った断崖絶壁と、鋭く尖った「ローソク岩」が姿を現しました。
「これが利尻山の本当の姿か……」と思わず息を呑むほどの迫力です。ここからは、反対側の鴛泊(おしどまり)コースを登ってくる登山者たちの姿も見え、山頂へ続く最後の稜線がくっきりと望めます。

山頂手前のロープ場
山頂稜線

9合目から鴛泊ルートとの合流点までの間には、このコース最大の難所「親不知子不知(おやしらずこしらず)」が待ち構えています。
ここは瓦礫が散乱する急斜面で、非常に滑りやすく、落石の危険も高い場所。親が子を、子が親を顧みる余裕もないほど険しいことからその名がついたと言われる通り、一瞬も気が抜けません。

鷲泊コースとの分岐
仙法志稜・鋭い稜線

設置されたロープを頼りに、三点支持を意識して慎重に高度を上げます。崩れやすい足元に神経を使いますが、見上げれば頂上はもうすぐそこ。最後の力を振り絞ります。
ようやく鴛泊コースとの分岐点に到着。ここからは多くの登山者と合流し、賑やかになります。

山頂風景
山頂の祠

ついに辿り着いた山頂。そこには祠が静かに鎮座していました。
360度、どこを見渡しても海。視線を転じれば、仙法志(せんぽうし)へと続く鋭い稜線がナイフの刃のように伸びています。

鬼脇尾根。ここに鬼脇コースがあった。

また、かつて登山道があった「鬼脇(おにわき)コース」の尾根も眼下に見ることができました。現在は通行止めとなっているそのルートは、崩落が激しく、山の厳しさを無言で語っているかのようです。
山頂で食べるおにぎりの味は格別でした。空は抜けるような青。遠くサハリンの影を探しながら、この島に立てた喜びを噛み締めました。